Jenkins vs. GitHub Actions vs. GitLab CI: 最適なCI/CDツールはどれ?【2025年最新版】
CI/CDツールの三大巨頭、Jenkins、GitHub Actions、GitLab CIを徹底比較。それぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてあなたのプロジェクトに最適なツールの選び方を、初心者にも分かりやすく解説します。
はじめに
現代のソフトウェア開発において、「CI/CD」はもはや欠かせないプラクティスとなっています。CI/CDとは、**継続的インテグレーション(Continuous Integration)と継続的デリバリー/デプロイメント(Continuous Delivery/Deployment)**の略で、アプリケーションのビルド、テスト、リリースといった一連のプロセスを自動化し、開発のスピードと品質を向上させるための仕組みです。
このCI/CDを実現するためのツールとして、現在多くの開発現場で利用されているのが「Jenkins」「GitHub Actions」「GitLab CI/CD」の3つです。それぞれが強力な機能を持ちながらも、その設計思想や得意なことには大きな違いがあります。
「どのツールを選べばいいのかわからない…」 「自分のプロジェクトに最適なのはどれだろう?」
この記事では、これらCI/CDツールの三大巨頭を、それぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてどのようなプロジェクトに向いているのかという観点から、初心者にも分かりやすく徹底的に比較・解説していきます。
1. Jenkins:カスタマイズ性の王者
Jenkinsは、CI/CDツールの世界で最も古くから存在し、長年の実績を持つオープンソースの自動化サーバーです。
Jenkinsの特徴
- 無限のカスタマイズ性: Jenkinsの最大の強みは、その圧倒的なカスタマイズ性です。1,800を超える豊富なプラグインがコミュニティによって開発されており、これらを組み合わせることで、ほぼあらゆる種類のビルド、テスト、デプロイのワークフローを構築できます。
- セルフホスト型: 基本的に、自社で用意したサーバーにJenkinsをインストールして運用します。これにより、セキュリティポリシーやインフラ環境を完全に自社の管理下に置くことができます。
- 自由度の高い設定: ビルドの実行方法から通知の仕方まで、あらゆる設定をGUI(グラフィカルな画面)を通じて細かく調整できます。
メリット
- 無料ではじめられる: オープンソースであるため、ソフトウェア自体のライセンス費用はかかりません。
- 圧倒的な柔軟性: どんなに複雑で特殊な要件を持つプロジェクトでも、プラグインを駆使することで対応できる可能性が高いです。
- 豊富な情報と実績: 歴史が長いため、インターネット上にドキュメントやノウハウ、トラブルシューティングの情報が豊富に存在します。
デメリット
- 管理・運用コスト: サーバーの構築、セキュリティ対策、Jenkins本体やプラグインのアップデートといった管理・運用をすべて自前で行う必要があり、専門的な知識と工数が求められます。
- 設定の複雑さ: GUIベースの設定は直感的ですが、ジョブの数が増えると管理が煩雑になりがちです。近年は
Jenkinsfile
というコードで設定を管理する方法も主流ですが、独自の記法を学ぶ必要があります。 - UIの古さ: 伝統的なUIは、最新のツールに比べると古く感じられることがあります。
2. GitHub Actions:GitHubとの完璧な融合
GitHub Actionsは、ソースコード管理プラットフォームであるGitHubに完全に統合されたCI/CD機能です。
GitHub Actionsの特徴
- GitHubネイティブ: GitHubのリポジトリ内で、コードのプッシュやプルリクエストの作成といったイベントをきっかけに、自動的にワークフローを実行できます。ソースコードとCI/CDの定義が同じ場所にあるため、管理が非常にシンプルです。
- YAMLによるコードベースの設定: ワークフローは
YAML
というシンプルな形式のテキストファイルで定義します。これにより、CI/CDの設定もコードと同様にバージョン管理が可能です。 - 豊富な「Actions」マーケットプレイス: 世界中の開発者が作成した再利用可能な「アクション」(特定の処理を行う部品)がマーケットプレイスで公開されています。これらを組み合わせるだけで、複雑なワークフローを簡単に構築できます。
- サーバーレス実行環境: GitHubが管理する仮想マシン上でワークフローが実行されるため、開発者はサーバーの管理を一切意識する必要がありません。
メリット
- 導入が非常に簡単: GitHubリポジトリがあれば、数分で最初のワークフローを動かし始めることができます。
- GitHubとのシームレスな連携: プルリクエストのステータスチェックなど、GitHub上での開発体験が飛躍的に向上します。
- 強力なコミュニティ: マーケットプレイスの存在により、車輪の再発明をすることなく、コミュニティの知恵を借りて効率的に開発を進められます。
- コスト効率: パブリックリポジトリであれば無料で利用でき、プライベートリポジトリでも一定の無料枠が用意されています。
デメリット
- GitHubへの依存: 当然ながら、GitHubを利用していることが前提となります。
- セルフホストの複雑さ: 自前のサーバーで実行(セルフホストランナー)することも可能ですが、その設定や管理はJenkinsほど直感的ではありません。
- 実行時間の制限とコスト: 無料枠を超えて利用する場合、実行時間に応じて課金されます。大規模なプロジェクトではコストが想定以上になる可能性も考慮が必要です。
3. GitLab CI/CD:オールインワンのDevOpsプラットフォーム
GitLab CI/CDは、ソースコード管理からCI/CD、パッケージ管理、セキュリティスキャンまで、ソフトウェア開発のライフサイクル全体をカバーする「オールインワン」のプラットフォームであるGitLabに組み込まれた機能です。
GitLab CI/CDの特徴
- 単一プラットフォームでの完結: ソースコードの管理からデプロイまで、すべてのプロセスをGitLabという一つのツール内で完結できます。複数のツールを連携させる手間や複雑さがありません。
- Auto DevOps: GitLabがコードを自動的に検出し、ビルド、テスト、デプロイ、監視までの一連のCI/CDパイプラインを自動で構築してくれる強力な機能です。
- 組み込みの機能が豊富: コンテナレジストリ(Dockerイメージの保管場所)やセキュリティスキャン機能などが標準で統合されており、追加の設定なしで利用できます。
- 柔軟な実行環境: GitHub Actionsと同様に、GitLabが提供する共有ランナーと、自前で用意するセルフホストランナーの両方を選択できます。
メリット
- シームレスな体験: 開発の全工程が一つのUIで完結するため、ツールの切り替えがなく、非常にスムーズな開発体験が得られます。
- 強力な標準機能: 追加のツールを探さなくても、コンテナ管理やセキュリティチェックといったモダンな開発に必要な機能が最初から揃っています。
- 導入の容易さ: GitLabにリポジトリを作成し、
.gitlab-ci.yml
という設定ファイルを追加するだけでCI/CDを開始できます。
デメリット
- GitLabエコシステムへのロックイン: 全てが統合されていることの裏返しとして、他のツール(例えば、ソースコード管理はGitHub、CIはGitLab CI)と組み合わせることは想定されておらず、GitLabのエコシステムに深く依存することになります。
- 多機能ゆえの複雑さ: 非常に多機能であるため、全ての機能を使いこなすには学習が必要です。シンプルなCI/CDだけを求めている場合には、機能が過剰に感じられるかもしれません。
- コミュニティの規模: GitHub Actionsのマーケットプレイスと比較すると、再利用可能なコンポーネントのコミュニティはまだ小さいかもしれません。
比較まとめ:あなたのプロジェクトに最適なツールは?
比較項目 | Jenkins | GitHub Actions | GitLab CI/CD |
---|---|---|---|
ホスティング | セルフホストが基本 | クラウド(GitHub提供)が基本 | クラウド版とセルフホスト版の両方を提供 |
設定方法 | GUIまたはJenkinsfile (独自記法) | YAMLファイル | YAMLファイル |
エコシステム | ◎ 非常に豊富(プラグイン) | ◎ 非常に豊富(マーケットプレイス) | 〇 統合された機能が豊富 |
導入の容易さ | △ サーバー構築が必要 | ◎ 非常に簡単 | ◎ 簡単 |
主な強み | 無限のカスタマイズ性、完全なコントロール | GitHubとの完璧な連携、コミュニティの力 | オールインワンのシームレスな開発体験 |
主な弱み | 管理・運用コスト、設定の複雑さ | GitHubへの依存、実行コストの可能性 | GitLabへのロックイン、多機能ゆえの複雑さ |
最適なユースケース | 特殊な要件を持つ大規模プロジェクト、オンプレミス環境 | GitHubで開発するオープンソースプロジェクト、モダンなWeb開発 | DevOps全体を単一プラットフォームで実現したいチーム |
結論
-
Jenkinsを選ぶべきなのは…
- オンプレミス環境でCI/CDを構築する必要がある。
- 非常に特殊なビルドプロセスや、既存の社内システムとの連携など、高度なカスタマイズが不可欠。
- サーバーの管理・運用を行う専門のチームが存在する。
-
GitHub Actionsを選ぶべきなのは…
- ソースコードをGitHubで管理している。
- 手軽にCI/CDを始めたい。
- オープンソースプロジェクトや、コミュニティの豊富な資産を活用したい。
-
GitLab CI/CDを選ぶべきなのは…
- ソースコード管理からデプロイ、監視まで、DevOpsのプロセス全体を一つのツールで完結させたい。
- これから新しいプロジェクトを始めるにあたり、強力なCI/CD機能を標準で利用したい。
CI/CDツールの選択は、開発チームの文化やプロジェクトの規模、そして将来の展望に大きく影響します。それぞれのツールの思想と特性を深く理解し、あなたのチームにとって最も生産性が高まる選択をすることが、成功への鍵となるでしょう。
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