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マイクロサービスアーキテクチャとは?モノリシックとの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

マイクロサービスアーキテクチャの基本を初心者にも分かりやすく解説。モノリシックとの違い、メリット・デメリット、そしてどのようなプロジェクトに向いているのかを具体例を交えて丁寧に説明します。モダンなシステム開発のトレンドを理解しましょう。

Tags:#解説

はじめに:システム開発の新しい常識「マイクロサービスアーキテクチャ」

近年、Webサービスやアプリケーションの開発において、「マイクロサービスアーキテクチャ」という言葉を耳にする機会が増えました。NetflixやAmazon、Googleといった巨大なIT企業が採用していることで知られ、モダンなシステム開発のトレンドとして注目されています。

しかし、「マイクロサービス」と聞くと、なんだか難しそう…と感じる方もいるかもしれません。この記事では、マイクロサービスアーキテクチャが一体どのようなもので、なぜこれほど注目されているのかを、従来の開発手法と比較しながら、専門用語を極力使わずに、やさしく、そして丁寧に解説していきます。


マイクロサービスアーキテクチャとは?「小さな専門家チーム」

マイクロサービスアーキテクチャをひと言で説明すると、「一つの大きなシステムを、それぞれが独立した小さな機能の集まり(サービス)に分割して構築する」という考え方です。

例えるなら、

  • 従来のシステム(モノリシックアーキテクチャ):すべての機能が一つにまとまった「巨大な万能選手」のようなものです。例えば、レストランの「何でも屋」さんが、料理も、接客も、会計も、掃除も、全部一人でこなしているようなイメージです。

  • マイクロサービスアーキテクチャ:それぞれの機能が独立した「小さな専門家チーム」のようなものです。レストランで言えば、「料理専門のシェフチーム」「接客専門のホールチーム」「会計専門の経理チーム」といったように、役割ごとにチームが分かれているイメージです。

なぜ「小さな専門家チーム」が良いのか?

この「小さな専門家チーム」という考え方には、いくつかの大きなメリットがあります。

  • 独立性:それぞれのサービス(チーム)は、他のサービスから独立して開発、デプロイ(システムに組み込むこと)、運用ができます。
  • 専門性:各サービスは特定の機能に特化しているため、その機能に関する専門知識を深めやすくなります。
  • 柔軟性:特定のサービスに問題が発生しても、他のサービスには影響を与えにくくなります。また、特定のサービスだけをスケールアップ(性能向上)させたり、新しい技術を導入したりすることも容易です。

モノリシックアーキテクチャとの違い

マイクロサービスアーキテクチャをより深く理解するために、従来の「モノリシックアーキテクチャ」と比較してみましょう。

モノリシックアーキテクチャ:巨大な万能選手

モノリシックアーキテクチャは、すべての機能が単一の大きなプログラムとして構築されているシステムです。

メリット:

  • 開発がシンプル:小規模なシステムであれば、すべてのコードが一つにまとまっているため、開発の初期段階では理解しやすく、管理も比較的容易です。
  • デプロイが簡単:一つのプログラムなので、デプロイも一度に行えます。
  • テストがしやすい:全体が一つなので、テスト環境の構築が比較的簡単です。

デメリット:

  • 変更が難しい(硬直性):システムの一部を変更しようとすると、他の部分に予期せぬ影響を与える可能性があり、慎重なテストが必要になります。まるで、巨大な万能選手の腕を鍛えようとしたら、足の筋肉まで影響が出てしまうようなものです。
  • スケールが難しい:特定の機能だけ負荷が高まっても、システム全体をスケールアップする必要があり、コストがかかります。
  • 技術の選択肢が限られる:一度採用したプログラミング言語やフレームワークから変更するのが難しくなります。
  • 開発チームの規模に限界:コードベースが巨大になるため、複数のチームが同時に開発を進めるのが難しくなります。

マイクロサービスアーキテクチャ:小さな専門家チーム

マイクロサービスアーキテクチャは、システムを独立した小さなサービスに分割して構築するシステムです。

メリット:

  • 変更が容易(柔軟性):各サービスが独立しているため、他のサービスに影響を与えることなく、特定のサービスだけを修正・更新できます。
  • スケーラビリティが高い:負荷が高まったサービスだけを個別にスケールアップできます。例えば、注文処理サービスだけを増強するといったことが可能です。
  • 技術の選択肢が広がる:各サービスは独立しているため、それぞれに最適なプログラミング言語やデータベース、フレームワークを選択できます。
  • 開発効率の向上:小さなサービスごとに開発チームを編成できるため、並行して開発を進めやすくなります。
  • 障害の影響範囲が限定的:特定のサービスに障害が発生しても、他のサービスには影響を与えにくく、システム全体が停止するリスクを減らせます。

デメリット:

  • 複雑性が増す:多数のサービスが連携するため、システム全体の構成が複雑になります。サービス間の通信やデータの一貫性を保つための設計が難しくなります。
  • 運用が複雑になる:個々のサービスはシンプルでも、多数のサービスを監視・管理する必要があるため、運用コストが増加する可能性があります。
  • 分散トランザクションの難しさ:複数のサービスにまたがる処理(例えば、注文と在庫更新)で、データの一貫性を保つのが難しくなります。
  • 開発者のスキルが求められる:分散システム特有の課題(ネットワーク遅延、障害対応など)に対応するための知識や経験が必要になります。

マイクロサービスアーキテクチャが向いているプロジェクト

マイクロサービスアーキテクチャは、すべてのプロジェクトに最適なわけではありません。そのメリットがデメリットを上回るような、特定の種類のプロジェクトで真価を発揮します。

  1. 大規模で複雑なシステム: 機能が非常に多く、今後も継続的に機能追加や変更が予想されるシステム。例えば、ECサイト、SNS、動画配信サービスなど。

  2. 高いスケーラビリティが求められるシステム: ユーザー数やアクセス数が急激に増加する可能性があり、特定の機能だけを柔軟にスケールさせたいシステム。

  3. 複数の開発チームが並行して開発を進めるシステム: 各チームが独立したサービスを担当することで、開発効率を向上させたい場合。

  4. 新しい技術を積極的に導入したいシステム: 特定のサービスに新しいプログラミング言語やデータベースを試したい場合。


マイクロサービスアーキテクチャの具体的な活用例

マイクロサービスアーキテクチャは、私たちの身近な多くの大規模サービスで活用されています。

1. Netflix

Netflixは、マイクロサービスアーキテクチャの代表的な成功事例として知られています。動画のストリーミング、ユーザーの推薦、課金、アカウント管理など、すべての機能が独立した数千ものマイクロサービスとして動作しています。これにより、膨大なユーザーからのアクセスをさばき、新機能の迅速なリリース、そして障害発生時の影響範囲の限定を実現しています。

2. Amazon

AmazonのECサイトも、マイクロサービスアーキテクチャを採用しています。商品カタログ、注文処理、在庫管理、支払い、配送など、それぞれの機能が独立したサービスとして連携しています。これにより、世界中のユーザーに安定したサービスを提供し、日々変化するビジネス要件に迅速に対応しています。

3. Uber

配車サービスUberも、マイクロサービスアーキテクチャを活用しています。ドライバーと乗客のマッチング、ルート計算、料金計算、支払い処理など、それぞれの機能が独立したサービスとして動作しています。これにより、リアルタイムでのサービス提供と、世界各地でのサービス展開を可能にしています。


まとめ:マイクロサービスアーキテクチャの未来

マイクロサービスアーキテクチャは、システムの構築と運用に新たな複雑性をもたらす一方で、大規模なシステムにおける柔軟性、スケーラビリティ、開発効率を劇的に向上させる強力な設計思想です。

  • モノリシック:一つの巨大なプログラムにすべての機能がまとまっている。小規模ならシンプルだが、大規模になると変更やスケールが難しい。
  • マイクロサービス:システムを独立した小さな機能の集まりに分割する。大規模システムで柔軟性、スケーラビリティ、開発効率を高めるが、複雑性と運用コストが増す。

マイクロサービスアーキテクチャは、すべてのプロジェクトに万能な解決策ではありません。しかし、その特性を理解し、プロジェクトの規模や要件、チームのスキルセットに合わせて適切に採用することで、ビジネスの成長を加速させ、より堅牢で持続可能なシステムを構築するための強力な武器となるでしょう。


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