MySQL vs PostgreSQL徹底比較!どちらを選ぶべきか?【2025年版】
Web開発で人気のデータベース、MySQLとPostgreSQL。どちらも優れたRDBMSですが、その特性は大きく異なります。この記事では、両者の違いを機能、パフォーマンス、ユースケースなど様々な観点から徹底比較。あなたのプロジェクトに最適なデータベース選びをサポートします。
MySQL vs PostgreSQL: あなたのプロジェクトに最適なのはどちらか?
Web開発の世界で、データベースの選択はプロジェクトの成否を左右する重要な決断です。中でも、オープンソースのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)として絶大な人気を誇るのが「MySQL」と「PostgreSQL」です。
どちらも強力で信頼性の高いデータベースですが、それぞれに異なる思想と特徴があり、得意な領域も異なります。一見似ているように見える両者ですが、その違いを理解しないまま選択してしまうと、開発の効率や将来の拡張性に大きな影響を与えかねません。
この記事では、MySQLとPostgreSQLの基本的な違いから、機能、パフォーマンス、そしてどのようなプロジェクトに向いているのか(ユースケース)まで、多角的に徹底比較します。それぞれのメリット・デメリットを深く理解し、あなたのプロジェクトにとって最適な選択をするための一助となれば幸いです。
1. MySQLとPostgreSQLの根本的な違い
まず、両者の最も根本的な違いを理解しましょう。それは、開発の哲学と目指す方向性にあります。
項目 | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
開発哲学 | シンプルさと速さを重視 | 機能の豊富さ、拡張性、標準SQLへの準拠を重視 |
位置づけ | 高速な読み取り処理が得意な、Webアプリケーションのバックエンドとして広く採用 | 複雑なクエリやデータ分析、高いデータ整合性が求められるシステムで真価を発揮 |
別名 | 「The world's most popular open source database」 | 「The world's most advanced open source relational database」 |
MySQLは、とにかくシンプルで使いやすく、高速であることを追求してきました。特に読み込み(Read)処理の速さには定評があり、WordPressに代表されるようなCMS(コンテンツ管理システム)や、多くのWebアプリケーションのバックエンドとして、圧倒的なシェアを誇ります。学習コストが比較的低く、情報が豊富なため、初心者でも始めやすいのが大きな魅力です。
一方、PostgreSQLは、多機能性と拡張性、そしてSQL標準への厳格な準拠を志向しています。その豊富な機能群は「オープンソースのOracle」と評されるほどで、複雑なデータ構造や処理、大規模なデータ分析、地理情報システム(GIS)など、専門性の高い領域でその力を発揮します。データの一貫性や堅牢性を非常に重視しているため、金融システムのような高い信頼性が求められる場面でも採用されています。
この根本的な思想の違いが、後述する機能やパフォーマンスの差となって表れてくるのです。
2. 機能面での詳細比較
次に、具体的な機能の違いを詳しく見ていきましょう。
機能 | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
データ型 | 基本的なデータ型を網羅 | 幾何学、配列、JSONB、ネットワークアドレスなど非常に多彩なデータ型をサポート |
ACID準拠 | ストレージエンジン(InnoDB)に依存 | 常にACIDに準拠。高いデータ整合性を保証 |
JSONサポート | JSON型をサポート | JSONB型をサポート。インデックスを利用でき、高速な検索・更新が可能 |
インデックス | B-tree、R-treeなど基本的なもの | B-tree、Hash、GiST、SP-GiST、GIN、BRINなど多彩。部分インデックスや式インデックスも可能 |
拡張性 | ストレージエンジンのプラグイン機構 | 関数、データ型、演算子などをユーザーが独自に定義可能。Foreign Data Wrapper (FDW)で外部データソースも扱える |
SQL準拠度 | 独自の拡張構文も多い | SQL標準への準拠度が高い |
MVCC | InnoDBでサポート | 全トランザクションでサポート。高い同時実行性を実現 |
データ型とJSONサポート:PostgreSQLの圧勝
PostgreSQLの最も大きなアドバンテージの一つが、対応データ型の豊富さです。MySQLが提供する基本的なデータ型に加え、PostgreSQLは配列型、幾何学型(点、線、多角形など)、**ネットワークアドレス型(IPアドレスなど)**といった特殊なデータ型をネイティブでサポートします。
特に注目すべきはJSONサポートの違いです。MySQLもJSON型をサポートしていますが、PostgreSQLの**JSONB
型はバイナリ形式でデータを格納します。これにより、JSONB
内の特定のキーに対してインデックスを作成**でき、JSONドキュメントに対する検索や更新を劇的に高速化できます。これは、NoSQLデータベースのような柔軟なデータハンドリングをRDBMS内で実現する強力な機能です。
トランザクションとデータ整合性(ACID)
ACID(原子性、一貫性、独立性、永続性)は、データベースのトランザクション処理において信頼性を担保するための重要な特性です。
PostgreSQLは、その設計思想から常にACIDに準拠しており、いかなる状況でもデータの整合性を最大限に保とうとします。これは、金融取引や在庫管理など、1円の誤差も許されないようなミッションクリティカルなシステムにおいて絶対的な安心感をもたらします。
一方、MySQLは選択するストレージエンジンによってACIDへの準拠度が異なります。現在主流のInnoDB
エンジンはACIDに準拠していますが、かつてデフォルトであったMyISAM
は非準拠です。この柔軟性はメリットにもなりますが、信頼性の観点ではPostgreSQLに軍配が上がります。
拡張性:開発者の創造性を刺激するPostgreSQL
PostgreSQLは「拡張性」を非常に重視しています。ユーザーが独自に関数、データ型、演算子、集約関数などをC言語やPL/pgSQLなどの手続き言語で定義できます。
さらに強力なのがForeign Data Wrapper (FDW) という仕組みです。これを利用すると、他のPostgreSQLサーバーはもちろん、MySQL、Oracle、MongoDB、さらにはCSVファイルやWeb APIといった外部のデータソースを、あたかもPostgreSQL内のテーブルであるかのように扱うことができます。これにより、データ連携やマイクロサービスアーキテクチャにおいて、驚くほどの柔軟性を発揮します。
3. パフォーマンス:単純な速さ vs 複雑な処理能力
パフォーマンスに関しては、「どちらが一方的に速い」と断言することはできません。ワークロード(どのような処理が多いか)によって、得意・不得意が分かれるためです。
-
MySQLが得意なこと:単純な読み取り(Read)処理
- シンプルな
SELECT
文を大量に、かつ高速に処理することを得意とします。 - Webサイトのコンテンツ表示や、SNSのタイムライン取得など、読み取りがメインのアプリケーションで高いパフォーマンスを発揮します。
- アーキテクチャがシンプルな分、オーバーヘッドが少なく、軽い処理を数多くこなすことに長けています。
- シンプルな
-
PostgreSQLが得意なこと:複雑なクエリと書き込み(Write)処理
- 複数のテーブルを結合(JOIN)したり、サブクエリやウィンドウ関数を多用するような複雑で大規模なクエリの実行において、その高度なクエリオプティマイザが真価を発揮します。
- MVCC(Multi-Version Concurrency Control)の実装により、読み取りと書き込みが同時に大量に発生するような高負荷な状況でも、ロック競合が起こりにくく、安定したパフォーマンスを維持します。
- データウェアハウスでの分析クエリや、書き込みが頻繁に発生するOLTP(オンライントランザクション処理)システムで有利です。
パフォーマンスのまとめ
ワークロード | MySQL | PostgreSQL |
---|---|---|
単純な読み取り(Read-heavy) | ◎ | 〇 |
複雑なクエリ(JOIN多用など) | △ | ◎ |
書き込み・更新(Write-heavy) | 〇 | ◎ |
高い同時実行性 | 〇 | ◎ |
簡単に言えば、「速度のMySQL、安定性と多機能性のPostgreSQL」 という構図は、パフォーマンス面においても当てはまると言えるでしょう。
4. どちらを選ぶべきか?ユースケース別・最適な選択
これまで見てきた特徴を踏まえ、どのようなプロジェクトにどちらのデータベースが適しているのか、具体的なユースケースを考えてみましょう。
MySQLが最適なケース
シンプルさと高速な読み取り性能が求められる場面で、MySQLは第一の選択肢となります。
- ブログやCMS(WordPressなど): 記事データの読み取りが圧倒的に多いため、MySQLの高速性が活きます。
- 小〜中規模のWebアプリケーション: 開発のスピードが重視され、複雑なデータ分析が不要な多くのWebサービスのバックエンドに適しています。
- 読み取り処理が中心のシステム: 例えば、ECサイトの商品カタログ表示部分など、書き込みよりも参照が頻繁な場合に最適です。
- とにかく早く開発を始めたい場合: 豊富な情報、多くのホスティングサービスでの採用実績、学習コストの低さから、迅速なプロトタイピングや開発スタートが可能です。
PostgreSQLが最適なケース
データの整合性、複雑な処理、将来の拡張性が重要なプロジェクトでは、PostgreSQLがその能力を最大限に発揮します。
- 大規模で複雑なWebアプリケーション: 金融サービス、ERP(統合基幹業務システム)、大規模なSaaSなど、複雑なビジネスロジックとデータ構造を持つシステム。
- データ分析・BI(ビジネスインテリジェンス)システム: ウィンドウ関数や共通テーブル式(CTE)などを駆使した高度な分析クエリを効率的に実行できます。
- 地理情報システム(GIS): 拡張機能である
PostGIS
を導入することで、高度な地理空間データの保存、インデックス作成、クエリ実行が可能になります。これはMySQLでは実現が困難です。 - 高いデータ整合性が求められるシステム: 勘定系システム、在庫管理システムなど、データの正確性がビジネスの根幹をなす場合に不可欠です。
- 将来的に多様なデータ活用が見込まれる場合: 拡張性の高さとFDWにより、将来のデータソースの多様化にも柔軟に対応できます。
5. まとめ:未来を見据えたデータベース選択を
MySQLとPostgreSQLは、どちらも素晴らしいオープンソースRDBMSであり、どちらが絶対的に優れているというものではありません。両者の違いは優劣ではなく、思想と特性の違いにあります。
MySQL | PostgreSQL | |
---|---|---|
強み | シンプル、高速(特に読み取り)、使いやすさ、普及率 | 多機能、高い拡張性、データ整合性、複雑なクエリ性能 |
キーワード | スピードとシンプルさ | 堅牢性と柔軟性 |
選ぶべき時 | 開発速度と読み取り性能を重視する場合 | データ整合性、複雑な処理、将来の拡張性を重視する場合 |
あなたのプロジェクトが求めるものは何でしょうか?
- 素早く立ち上げ、多くのユーザーにコンテンツを届けることが最優先なら、MySQLが力強いパートナーとなるでしょう。
- データの正確性を担保し、複雑な要件に応え、未来の成長に備えることが重要なら、PostgreSQLが堅牢な基盤を提供してくれます。
近年、アプリケーションの複雑化やデータ活用の高度化に伴い、PostgreSQLの人気が世界的に高まっています。しかし、MySQLもバージョンアップを重ね、JSON機能の強化やウィンドウ関数のサポートなど、進化を続けています。
最終的な選択は、あなたのプロジェクトの現在の要件と将来のビジョンによって決まります。この記事で解説したそれぞれの特徴を深く理解し、技術的な要件だけでなく、チームのスキルセットや運用コストなども含めて総合的に判断することが、プロジェクトを成功に導く鍵となるでしょう。
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