Bamba news

AWS Lambda vs Google Cloud Functions vs Azure Functions【2025年版】主要サーバーレスを徹底比較

AWS Lambda、Google Cloud Functions、Azure Functionsのどれを選べばいい?本記事では、3大クラウドのサーバーレス(FaaS)サービスを料金、性能、対応言語、トリガーなど多角的に徹底比較。あなたのプロジェクトに最適なサービスを見つけるための選び方を詳しく解説します。

Tags:#開発

はじめに:サーバーレスとFaaSの時代

近年、クラウドコンピューティングの世界で「サーバーレス」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。サーバーレスとは、開発者がサーバーの存在を意識することなく、アプリケーションのコード実行に集中できるコンピューティングモデルです。サーバーのプロビジョニング、スケーリング、メンテナンスといった管理作業をクラウドプロバイダーに任せられるため、開発者はより迅速に、そして効率的にサービスを構築できます。

このサーバーレスアーキテクチャの中核をなすのが、FaaS (Function as a Service) です。FaaSは、特定のイベント(HTTPリクエスト、データベースの更新、ファイルのアップロードなど)をきっかけに、あらかじめ用意しておいた「関数(Function)」と呼ばれる小さなコードの塊を実行するサービスです。

現在、主要なクラウドプロバイダーが独自のFaaSを提供しており、中でもAWS (Amazon Web Services) の「Lambda」Google Cloud の「Cloud Functions」、そして Microsoft の「Azure Functions」 は、3大FaaSとして知られています。

この記事では、これら3つの主要なFaaSについて、料金体系、パフォーマンス、対応言語、エコシステムとの連携など、さまざまな観点から徹底的に比較・解説します。あなたのプロジェクトにとって最適なサービスはどれか、その選定の一助となれば幸いです。


各サービスの概要

まずは、それぞれのサービスが持つ特徴を大まかに見ていきましょう。

AWS Lambda:サーバーレスのパイオニア

2014年に登場したAWS Lambdaは、FaaS市場を切り開いたパイオニア的存在です。長年の実績に裏打ちされた安定性と豊富な機能、そして他の追随を許さないほど広範なAWSエコシステムとのシームレスな連携が最大の強みです。S3(ストレージ)、DynamoDB(NoSQLデータベース)、API Gatewayなど、200を超えるAWSサービスと簡単に連携でき、複雑なアーキテクチャも柔軟に構築可能です。ドキュメントやコミュニティによる情報も豊富で、初心者からエンタープライズまで幅広く利用されています。

Google Cloud Functions:シンプルさとGoogleサービス連携

Google Cloud Functionsは、その名の通りGoogleの強力なサービス群との連携に優れています。Cloud Storage、Firestore、Pub/SubといったGCPのサービスはもちろん、FirebaseやGoogleアシスタント、Googleアナリティクスといった外部サービスとも容易に連携できます。第1世代と第2世代があり、第2世代ではCloud Runをベースとすることで、より長時間の実行や柔軟なスケーリングが可能になるなど、機能が大幅に強化されています。シンプルで直感的なインターフェースも特徴の一つです。

Azure Functions:Microsoftエコシステムとの親和性と柔軟性

Azure Functionsは、Microsoft製品との強力な連携が魅力です。特に、.NET開発者にとっては非常に親しみやすい環境が提供されています。PowerShellをネイティブでサポートしている点もユニークです。また、「Durable Functions」という拡張機能を使えば、複数の関数を組み合わせてステートフルなワークフロー(状態を持つ一連の処理)を簡単に実装できるなど、他のサービスにはない独自の機能を持っています。従量課金プラン以外に、App ServiceプランやPremiumプランといった多様なホスティングプランが用意されており、要件に応じた柔軟な構成が可能です。


詳細比較:あなたに最適なFaaSはどれ?

ここでは、具体的な項目ごとに3つのサービスを比較していきます。それぞれの強みと弱みを理解し、自身のプロジェクト要件と照らし合わせてみましょう。

1. 料金体系

FaaSの料金は、主に「実行回数」と「コンピューティング時間」の2つの要素で決まります。コンピューティング時間は、「割り当てたメモリ量 × 実行時間(秒)」で計算されるGB秒という単位が使われます。

項目AWS LambdaGoogle Cloud Functions (第2世代)Azure Functions (従量課金プラン)
無料利用枠 (月あたり)100万リクエスト、40万GB秒200万リクエスト、100万GB秒、5GBの下り(内向き)トラフィック100万リクエスト、40万GB秒
実行リクエスト料金$0.20 / 100万リクエスト$0.20 / 100万リクエスト$0.20 / 100万リクエスト
コンピューティング料金 (GB秒あたり)0.0000166667(x86)0.0000166667 (x86) 0.0000133334 (Arm)0.0000025(vCPU)+0.0000025 (vCPU秒) + 0.00000035 (GB秒)$0.000016

ポイント:

  • 無料枠: Google Cloud Functionsがリクエスト数、コンピューティング時間ともに最も寛大です。小規模なプロジェクトや個人開発で試すには非常に魅力的です。
  • 料金体系の複雑さ: AWSとAzureは比較的シンプルですが、Google Cloud FunctionsはvCPUの利用時間も課金対象となるため、若干複雑に感じられるかもしれません。
  • コストパフォーマンス: 料金はリージョンやアーキテクチャ(AWSのx86/Arm)によっても変動します。単純な比較は難しいですが、一般的にリクエスト数が少なく、実行時間が短い処理であれば大きな差は出にくいです。トラフィックが多い場合は、各社の料金シミュレーターで試算することが不可欠です。

2. 対応言語とランタイム

開発者にとって、使い慣れた言語が使えるかどうかは重要な選定基準です。

サービス主要な対応言語カスタムランタイム
AWS LambdaNode.js, Python, Ruby, Java, Go, .NET (C#, PowerShell)対応 (任意の言語を持ち込める)
Google Cloud FunctionsNode.js, Python, Go, Java, .NET, Ruby, PHP対応 (Buildpacksを利用)
Azure Functions.NET (C#, F#), Node.js, Python, Java, PowerShell, TypeScript対応 (カスタムハンドラーを利用)

ポイント:

  • 網羅性: 3サービスとも、主要なプログラミング言語はほぼサポートしています。
  • PHPサポート: Google Cloud FunctionsはPHPを公式にサポートしている点が特徴です。PHPベースの資産を活かしたい場合に有力な選択肢となります。
  • PowerShellサポート: Azure FunctionsとAWS LambdaはPowerShellをサポートしており、インフラ管理などのスクリプトをサーバーレスで実行したい場合に便利です。
  • カスタムランタイム: 3サービスともカスタムランタイムをサポートしているため、公式サポート外の言語(Rustなど)でも利用可能です。この柔軟性により、特定の言語に縛られることなくFaaSのメリットを享受できます。

3. パフォーマンスと実行制限

パフォーマンス、特に「コールドスタート」と「実行時間制限」は、FaaSの特性を理解する上で非常に重要です。

コールドスタートとは? 関数が長期間呼び出されていない場合、実行環境が破棄されていることがあります。その状態から再度呼び出されると、環境の初期化から処理が始まるため、通常よりも実行開始までに時間がかかります。この最初の遅延をコールドスタートと呼びます。

項目AWS LambdaGoogle Cloud FunctionsAzure Functions
最大実行時間15分 (900秒)60分 (HTTPトリガー, 第2世代)
9分 (イベントドリブン, 第2世代)
10分 (従量課金プラン, 最大)
無制限 (App Serviceプラン)
メモリ割り当て128MB 〜 10,240MB (1MB単位)128MiB 〜 32GiB128MB 〜 1,536MB (従量課金プラン)
コールドスタート対策Provisioned Concurrency (常時起動)
SnapStart (Java向け)
min-instances (最小インスタンス数設定)Premiumプラン (常時ウォーム状態)

ポイント:

  • 実行時間: 長時間実行が必要なバッチ処理などには、HTTPトリガーのGoogle Cloud Functions (第2世代)や、Azure FunctionsのApp Serviceプランが適しています。AWS Lambdaも15分と比較的長いですが、それ以上の処理はStep Functionsなど他のサービスとの連携を検討する必要があります。
  • コールドスタート: ユーザーからのリクエストにリアルタイムで応答するようなAPIでは、コールドスタートは致命的な問題になり得ます。各社とも、インスタンスを常に起動させておく(ウォーム状態に保つ)ことでコールドスタートを回避する機能を提供していますが、これらは追加料金が発生します。
  • メモリ: 大量のメモリを必要とする処理(画像・動画処理、機械学習の推論など)では、最大32GiBまでスケールできるGoogle Cloud Functionsが有利です。

4. トリガーと統合性

FaaSは、どのような「イベント」をきっかけに関数を実行できるかが重要です。これは、各クラウドプロバイダーのエコシステムと深く関連しています。

サービス特徴的なトリガーと統合
AWS Lambda圧倒的なサービス連携数。 API Gateway (HTTP), S3 (ストレージ), DynamoDB (DB), SQS (キュー), Kinesis (ストリーミング), EventBridge (イベントバス)など、AWSのほぼ全てのサービスがトリガーになり得る。
Google Cloud FunctionsGoogleサービスとの親和性。 Cloud Storage, Firestore, Pub/Sub, Cloud LoggingなどGCPサービスに加え、Firebase, Google Analytics, Google Workspace (Gmailなど) とも連携可能。
Azure FunctionsMicrosoftエコシステムとの統合。 Azure Blob Storage, Cosmos DB, Service Bus, Event Gridなどに加え、Microsoft Graph (Office 365など) やTwilio (SMS送信) といったサードパーティサービスとの連携も強力。

ポイント:

  • エコシステムのロックイン: 基本的に、既に使用しているクラウドプラットフォームのFaaSを選択するのが最も簡単で効率的です。各サービスは自社のエコシステム内で最もスムーズに動作するように設計されています。
  • ユースケースの具体化: 「ストレージにファイルがアップロードされたら画像処理をしたい」ならS3/Cloud Storage/Blob Storageトリガー、「データベースにデータが書き込まれたら通知を送りたい」ならDynamoDB/Firestore/Cosmos DBトリガーというように、具体的なユースケースから必要なトリガーを逆引きで考えるのが良いでしょう。

選び方のポイント:ユースケース別考察

これまでの比較を踏まえ、どのような場合にどのサービスが適しているかをまとめます。

AWS Lambdaがおすすめなケース

  • すでにAWSをメインで利用している場合: 既存のAWSリソースとの連携が最もスムーズです。
  • 複雑で大規模なシステムを構築したい場合: 豊富なサービス群とStep Functionsなどを組み合わせることで、スケーラブルで堅牢なマイクロサービスアーキテクチャを構築できます。
  • 情報やノウハウを重視する場合: 最も歴史が長くユーザーも多いため、Web上の技術情報、書籍、コミュニティサポートが充実しています。

Google Cloud Functionsがおすすめなケース

  • すでにGCPやFirebaseをメインで利用している場合: 特にFirebaseと連携したモバイルアプリのバックエンド開発では強力な選択肢となります。
  • データ分析・機械学習パイプラインを構築したい場合: BigQueryやCloud AI Platformとの連携に優れています。
  • 長時間実行されるHTTPベースの処理が必要な場合: 第2世代の最大60分という実行時間は大きな魅力です。

Azure Functionsがおすすめなケース

  • .NET開発者や、Microsoft製品を多用する企業: Visual Studioとの統合など、開発体験は非常に優れています。
  • ステートフルなワークフローを簡単に実装したい場合: Durable Functionsは、複数の処理を順番に実行したり、分岐させたりする複雑なロジックをコードでシンプルに記述できます。
  • 多様なホスティングオプションが必要な場合: 処理の特性に応じて従量課金プランと専用プラン(App Service/Premium)を使い分けたい場合に柔軟に対応できます。

まとめ

AWS Lambda、Google Cloud Functions、Azure Functionsは、いずれも強力で成熟したFaaSです。それぞれに得意な領域があり、絶対的な優劣をつけることはできません。

サービス一言でいうと
AWS Lambda王者。 圧倒的な実績とエコシステムで、あらゆるユースケースに対応可能。
Google Cloud Functionsインテグレーター。 Googleの強力なサービス群とシームレスに連携。
Azure Functionsワークフローマスター。 .NETとの親和性とDurable Functionsによる柔軟な処理フローが魅力。

サーバーレス技術は、クラウドネイティブなアプリケーション開発のスタンダードとなりつつあります。この記事を参考に、まずは各サービスの無料枠を活用して実際に手を動かし、その特性を肌で感じてみてください。あなたのプロジェクトの要件に最も合致するサービスを選択し、サーバーレス開発のメリットを最大限に引き出しましょう。

お仕事のご依頼・ご相談はこちら

フロントエンドからバックエンドまで、アプリケーション開発のご相談を承っております。
まずはお気軽にご連絡ください。

関連する記事

SQL vs. NoSQL: データベースの違いを徹底解説!どちらを選ぶべき?

Web開発やデータ分析に不可欠なデータベース。その代表格である「SQL」と「NoSQL」の違いを、初心者にも分かりやすく、メリット・デメリット、得意な利用シーンを交えて徹底的に解説します。あなたのプロジェクトに最適なデータベース選びの参考にしてください。

MySQL vs PostgreSQL徹底比較!どちらを選ぶべきか?【2025年版】

Web開発で人気のデータベース、MySQLとPostgreSQL。どちらも優れたRDBMSですが、その特性は大きく異なります。この記事では、両者の違いを機能、パフォーマンス、ユースケースなど様々な観点から徹底比較。あなたのプロジェクトに最適なデータベース選びをサポートします。

Amazon RDS vs PlanetScale: 開発者視点で選ぶクラウドデータベース頂上決戦

従来の安定王者Amazon RDSと、開発者体験を革新する新星PlanetScale。本記事では、アーキテクチャ、スケーラビリティ、開発ワークフロー、料金体系など、あらゆる角度から両者を徹底比較。あなたのプロジェクトに最適なデータベース選びをサポートします。

ExcelDataReaderとは?.NETでExcelファイルを高速に読み込む方法を徹底解説

.NET開発者必見!ExcelDataReaderは、.xls、.xlsx、.csv形式のExcelファイルを高速かつ効率的に読み込むためのライブラリです。本記事では、その特徴、具体的な使い方、注意点をサンプルコード付きで詳しく解説します。サーバーサイドでのデータ処理やバッチ処理に最適です。

Pollyとは?.NETの回復性ライブラリを徹底解説【初心者向け】

.NET開発者必見!Pollyライブラリを使えば、リトライやサーキットブレーカーなどの回復性パターンを簡単に実装できます。本記事では、Pollyの基本的な使い方からHttpClientFactoryとの連携、高度な戦略まで、コード例を交えてわかりやすく解説します。

Bamba news