SIFT(スケール不変特徴変換)をやさしく解説|画像認識の基本を学ぼう
SIFT(スケール不変特徴変換)は、画像から特徴点を抽出し、照明や角度の違いにも強い特徴量を得る手法です。この記事では、SIFTの基本的な仕組みとその応用について、専門用語を避けてわかりやすく解説します。
はじめに
私たちは、日々さまざまな画像や写真を見ています。それらをコンピュータが理解するには、「この写真はどこに何が写っているのか」を判断する必要があります。しかし、画像は撮る角度や明るさ、距離、ぼやけ方などによって簡単に変わってしまいます。そこで登場するのが SIFT(スケール不変特徴変換) です。
この技術は、カナダのコンピュータ科学者デヴィッド・ロウ(David G. Lowe)によって1999年に初めて発表され、2004年に詳細な論文が公開されました。SIFTは、写真が少しぐらい変わっても「同じものだ」と見抜ける、非常に賢い方法です。ここでは、その仕組みをできるだけやさしく、たとえ話も交えながら丁寧に説明していきます。
SIFTってなに?
たとえば、「東京タワーの写真」を別々の人がいろんな角度から撮ったとしましょう。写真の色や明るさ、大きさはバラバラです。でも、SIFTを使うと、コンピュータは「これは全部、東京タワーだ!」と判断できます。 なぜそんなことができるのでしょうか?
SIFTは、画像の中から「特徴点」と呼ばれる特別な場所を見つけ出します。特徴点というのは、その画像の中でも「ここはちょっと他とは違う!」という、目印のような場所です。
SIFTの4つのステップをやさしく解説
いろんな大きさでぼかして探す
まず、画像を少しずつぼかしていきます。ぼかすというのは、ざっくり言えば「細かい部分を無視する」ことです。こうすることで、画像のサイズが違っていても同じ特徴を見つけやすくなります。
そのぼかした画像どうしを比べて、「ここだけなんだか変だな」という場所を探します。そこが、SIFTがいう「特徴点」です。
いらない点をふるいにかける
さっき見つけた点の中には、「本当に大事な点」と「なんとなく見つかっただけの点」があります。なので、ちゃんと使えるかどうかをチェックします。
たとえば、「画像のフチにある点」や「ただのノイズ」は、あとで問題になるので取り除きます。
向きをつける
ここがSIFTのすごいところです。画像の中のそれぞれの特徴点に「こっちが上です」と向きをつけるんです。これをすることで、画像が回転しても、「この点はこの点だ!」と判断できるようになります。
ちょうど、地図をくるくる回しても、北がどこかを知っていれば道に迷わないのと似ています。
特徴の「指紋」をつくる
最後に、それぞれの特徴点のまわりの様子を詳しく調べて、「指紋」のようなものを作ります。この「指紋」は128個の数字でできていて、これを比べれば「この点とあの点は同じかどうか」がわかります。
この数字の集まりを使って、画像と画像を比べていきます。
SIFTの強みってなに?
SIFTがなぜ人気なのか、それには理由があります。
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ズームしてもOK 写真が小さくても大きくても、同じ特徴点を見つけられるんです。
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回転してもOK 写真をくるっと回しても、特徴点の「向き」があるから大丈夫。
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明るさが違ってもOK 昼と夜、天気の違いなど、光の条件が変わっても認識できる。
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一部しか写ってなくてもOK 写真の中の一部が隠れていても、見えているところだけで判断できます。
SIFTはどこで使われているの?
パノラマ写真
スマホでパノラマを撮ると、カメラは自動的に画像をつなげてくれます。SIFTはそのつなぎ目を見つけて、うまく合成するのに使われています。
ロボットの「目」
ロボットがまわりを見て判断するために、SIFTで見える物体を認識することがあります。例えば、「ここに机があるな」とわかるようになります。
自動運転車
車のカメラが前を見ながら、「あれは信号機だ」「あれは歩行者だ」と判断する場面でも、SIFTのような技術が役に立っています。
画像検索
「この服と同じものを探したい」といった画像検索でも、SIFTが画像同士の特徴を比べることで似た商品を見つけてくれます。
よくある質問
Q1. SIFTって無料で使えるの?
以前は特許がありましたが、今は期限が切れて、誰でも自由に使えるようになっています。ただし、商用ソフトに使う場合は念のため確認するのがよいでしょう。
Q2. 他にも似た技術はある?
はい。SIFTのほかにも、「SURF」「ORB」「AKAZE」などの似た方法があります。最近はAIを使ったもっと賢い手法も登場していますが、SIFTは今でもわかりやすくて使いやすい方法として重宝されています。
おわりに
SIFTは、「画像のどこに注目すればよいか」を教えてくれる大切な技術です。しかも、その注目する場所は、画像が大きくても小さくても、回転していても、光の具合が違っていても、ちゃんと見つかるように設計されています。
画像処理やコンピュータビジョンの第一歩として、ぜひSIFTの考え方を知っておきましょう。この技術が分かれば、あなたの身の回りのテクノロジーがもっとおもしろく見えてくるはずです。
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