ランダムフォレスト(Random Forest)とは?わかりやすく解説
ランダムフォレストは、複数の「決定木」を組み合わせてより高い精度と安定性を実現する機械学習の手法です。この記事では、ランダムフォレストの基本的な考え方、仕組み、メリット・デメリットを、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説します。データ分析やAIに興味がある方におすすめです。
ランダムフォレスト(Random Forest)とは何か
ランダムフォレスト(Random Forest)とは、機械学習の手法の一つで、たくさんの小さな「決定木」を集めて、それらの意見を総合することで、より賢い判断をしようとする考え方です。「森(フォレスト)」という名前の通り、たくさんの木(決定木)が集まって構成されています。
以前、「決定木」について、物事を分類したり予測したりする際に、一連の質問と答えを繰り返して結論に至る、木の枝分かれのような構造をした分析手法だとお話ししました。決定木は、なぜその結論に至ったのかが分かりやすいという大きなメリットがある一方で、学習データに過剰に適合してしまう「過学習」を起こしやすいという弱点も持っています。
ランダムフォレストは、この決定木の弱点を克服し、より精度の高い予測や安定した結果を得るために考え出されました。
イメージとしては、「三人寄れば文殊の知恵」ということわざに近いかもしれません。一人の専門家(一本の決定木)の意見だけに頼るのではなく、たくさんの専門家(たくさんの決定木)に意見を聞き、それらを平均したり多数決を取ったりすることで、より信頼性の高い結論を導き出すのです。
「ランダム」という言葉がついているのは、森を作る個々の木(決定木)を育てる際に、わざと**ランダム性(偶然性)**を取り入れているからです。具体的には、それぞれの木が学習に使うデータを少しずつ変えたり、質問の候補となる特徴をランダムに選んだりします。これにより、多様性に富んだ、個性的な木がたくさん作られ、結果として森全体としての予測能力が高まるのです。
つまり、ランダムフォレストは、たくさんの少しずつ異なる決定木を作り、それらの多数決(分類の場合)や平均(予測の場合)によって最終的な判断を下すことで、決定木単体の弱点を補い、より頑健で高性能なモデルを実現する手法と言えます。
処理の流れ
ランダムフォレストがどのようにして作られ、使われるのか、そのステップをもう少し詳しく見ていきましょう。ここでも、以前の決定木の例えを引き続き使いながら説明します。
1. ランダムフォレストを作る(学習フェーズ)
目的は、たくさんの個性的な「決定木」を作り上げることです。
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データの準備: まず、学習に使用するための元となるデータセット(例えば、過去の顧客データと商品購入の有無など)を用意します。
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複数の決定木を「ランダムに」作る: ここがランダムフォレストの核心部分です。以下の手順で、指定した数だけ決定木を繰り返し作ります。例えば、100本の木からなる森を作るなら、この工程を100回繰り返します。
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データのランダムな選択(ブートストラップサンプリング): 元データから、ランダムにデータを選び出して、一本の決定木を学習させるための小さなデータセットを作ります。このとき、一度選んだデータを元に戻して再度選び直すこと(復元抽出)を許します。そのため、小さなデータセットの中には同じデータが複数回含まれることもありますし、一度も選ばれないデータも出てきます。こうすることで、それぞれの決定木が少しずつ異なるデータで学習することになり、多様性が生まれます。
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特徴のランダムな選択: 決定木が枝分かれする際、どの質問(どの特徴を使うか)を選ぶかが重要です。ランダムフォレストでは、全ての利用可能な特徴(例えば、年齢、性別、過去の購入金額など)の中から、さらにランダムにいくつかの特徴だけを選び出し、その選ばれた特徴の中から最適な質問を見つけます。これにより、各決定木が注目する特徴が偏るのを防ぎ、より多様な視点を持った木が育ちます。例えば、ある木は「年齢」と「性別」に注目し、別の木は「過去の購入金額」と「居住地域」に注目する、といった具合です。
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決定木の成長: 上記のようにしてランダムに選ばれたデータと特徴を使って、一本の決定木を成長させます。このとき、個々の決定木は過学習していても構いません(わざと枝刈りをしないことも多いです)。個々の木の弱点は、後でたくさんの木の意見をまとめることでカバーされるからです。
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森の完成: この作業を指定した回数繰り返すことで、たくさんの(例えば100本の)少しずつ異なる個性を持った決定木からなる「ランダムフォレスト」が完成します。
2. ランダムフォレストを使う(予測・分類フェーズ)
一度ランダムフォレストが完成すれば、新しいデータに対して予測や分類を行うことができます。
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新しいデータを森の各木に入力する: 新しいデータ(例えば、新しい顧客の情報)が来たら、そのデータを森の中の全ての決定木それぞれに入力し、各木に予測させます。
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各木の予測結果を集計する: 森の中のそれぞれの木が、自分なりの予測結果を出します。例えば、ある顧客が商品Aを購入するかどうかを予測する場合、100本の木があれば、100通りの「購入する/しない」という予測が出てくるわけです。
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最終的な結論を出す(多数決または平均):
- 分類問題の場合(例:購入する/しない、A/B/Cのどれか): 全ての木の予測結果を集めて、多数決を取ります。例えば、100本中70本の木が「購入する」と予測し、30本の木が「購入しない」と予測した場合、ランダムフォレストの最終的な結論は「購入する」となります。
- 回帰問題の場合(例:売上予測、気温予測など数値を予測する): 全ての木の予測結果(数値)の平均値を取ります。例えば、ある商品の来月の売上について、各木が予測した数値の平均を最終的な予測値とします。
このように、ランダムフォレストは、たくさんの少しずつ異なる意見(個々の決定木の予測)を集約することで、より頑健で信頼性の高い判断を下すことを目指します。
良いところ(メリット)
ランダムフォレストは、一本の決定木と比べて多くの優れた点を持っています。
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高い予測精度: これがランダムフォレストの最大の強みの一つです。複数の決定木の予測を組み合わせることで、個々の決定木が持つ誤差や偏りを相殺し合い、全体として非常に高い予測精度を達成することができます。特に、複雑なデータに対しても良好な性能を示すことが多いです。
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過学習しにくい: 決定木単体の大きな弱点であった「過学習(訓練データに適合しすぎて、未知のデータに対してうまく機能しないこと)」を大幅に抑制できます。これは、各決定木を異なるデータセット(ブートストラップサンプリング)と異なる特徴の組み合わせで学習させることで、個々の木が訓練データに過剰に特化してしまうのを防ぎ、森全体として汎用性の高いモデルになるためです。
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重要な変数(特徴)の評価ができる: ランダムフォレストは、どの特徴量が予測にどれだけ貢献しているか(重要度)を評価する機能も持っています。これは、各特徴量が予測結果の改善にどれだけ役立ったかを、森全体で集計することで算出されます。これにより、問題解決においてどのデータ項目に着目すべきかを知る手がかりになります。
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欠損値や外れ値に対して比較的頑健: 学習データの中に多少の欠損値(データがない部分)や外れ値(極端に他と異なる値)があっても、比較的安定した性能を維持しやすいと言われています。これは、多数の木で判断するため、一部のデータの問題が全体に与える影響が緩和されるためです。
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大規模なデータセットにも対応可能: 個々の決定木の学習は並列処理が可能(同時に複数の木を育てることができる)なため、比較的大きなデータセットに対しても効率的に学習を行うことができます。
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パラメータ調整が比較的容易: いくつかの調整すべきパラメータ(例えば、森を構成する木の数など)はありますが、他の高度な機械学習アルゴリズムと比較して、パラメータ設定にそれほど神経質にならなくても、ある程度良好な性能を発揮しやすいと言われています。一般的に、木の数を増やせば増やすほど性能は向上する傾向がありますが、ある程度の数を超えると効果は頭打ちになり、計算時間が増えるだけになります。
これらのメリットから、ランダムフォレストは分類問題・回帰問題の双方で非常に人気があり、コンペティション(Kaggleなど)から実際のビジネス応用まで、幅広い分野で強力なツールとして活用されています。
悪いところ(デメリット)
非常に強力なランダムフォレストですが、いくつかの苦手なことや注意点も存在します。
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モデルの解釈が難しい(ブラックボックス化しやすい): 決定木単体では「なぜその結論に至ったのか」という判断プロセスが明確にわかるのが大きなメリットでした。しかし、ランダムフォレストでは、多数の決定木(時には数百本以上)の予測を組み合わせるため、最終的な結論に至った具体的な理由を人間が直感的に理解するのは難しくなります。個々の木は解釈できても、森全体としてなぜその判断になったのかを説明するのは困難で、一種の「ブラックボックス」モデルと見なされることがあります。結果の透明性が非常に重要な場合には、この点が問題となることがあります。
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計算コストが高い(特に学習時): 多数の決定木を生成し、学習させる必要があるため、単一の決定木と比較して計算時間やメモリ使用量が多くなる傾向があります。特に、木の数が多い場合やデータセットが大きい場合には、学習に時間がかかることがあります。予測時も、全ての木にデータを通す必要があるため、リアルタイム性が厳しく求められるシステムでは考慮が必要です。
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過学習の可能性がゼロではない: 「過学習しにくい」というのは大きなメリットですが、完全に過学習を防げるわけではありません。特に、特徴量の数がデータ数に比べて非常に多い場合や、木の数を極端に少なく設定した場合などには、過学習のリスクが残ります。
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特定の種類のデータやタスクには不向きな場合がある: 例えば、非常に高次元で疎なデータ(ほとんどの値がゼロであるようなデータ、テキストデータなど)に対しては、必ずしも最良の性能を発揮するとは限りません。また、外挿(学習データの範囲外の値を予測すること)が苦手であるという特性もあります。決定木の集まりであるため、学習データに存在しなかったパターンの予測は困難です。
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パラメータ調整が不要なわけではない: 比較的パラメータ設定に寛容であるとはいえ、最高の性能を引き出すためには、やはりいくつかの主要なパラメータ(森を構成する木の数、各木で使用する特徴の数など)を適切に調整する(チューニングする)必要があります。このチューニングには、ある程度の試行錯誤や専門的な知識が求められることもあります。
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大きなモデルサイズ: 多数の木を保持するため、学習済みのモデルのサイズが大きくなることがあります。これは、モデルを保存したり配布したりする際に制約となる可能性があります。
これらのデメリットを理解した上で、ランダムフォレストの適用を検討することが重要です。予測精度を追求する場面では非常に強力な選択肢ですが、解釈性や計算資源とのバランスを考慮する必要があります。
まとめ
ランダムフォレスト(Random Forest)は、たくさんの少しずつ異なる「決定木」を集めて森のように構成し、それらの多数決や平均によって最終的な判断を下す、アンサンブル学習と呼ばれる機械学習の手法の一つです。
処理の流れは、
- 元の学習データからランダムにデータを選び出し(ブートストラップサンプリング)、
- さらに、決定木の各分岐点で使う特徴もランダムに選び出しながら、
- たくさんの個性的な決定木を育てます。
- 新しいデータを予測する際には、森の中の全ての木にそのデータを入力し、
- 各木の予測結果を集計(分類なら多数決、回帰なら平均)して、最終的な結論とします。
ランダムフォレストの良いところは、
- 単体の決定木よりも高い予測精度が期待できること
- 決定木の弱点であった過学習を効果的に抑制できること
- どの特徴が予測に重要だったかを評価できること
- 欠損値や外れ値に対して比較的頑健であること
- 大規模データにも対応可能で、並列処理もできること などが挙げられます。
一方で、悪いところとしては、
- 多数の木を組み合わせるため、モデルの解釈が難しくなる(ブラックボックス化しやすい)こと
- 学習に要する計算コスト(時間・メモリ)が大きい場合があること
- 過学習の可能性がゼロではないこと
- モデルのサイズが大きくなること などが挙げられます。
ランダムフォレストは、その高い精度と安定性から、分類問題・回帰問題の双方で広く採用されており、金融、医療、マーケティング、画像認識など、多岐にわたる分野で成果を上げています。個々の決定木のシンプルさと、集団の知恵を組み合わせるという強力なアプローチは、現代のデータ分析において欠かせないツールの一つと言えるでしょう。
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