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決定木(Decision Tree)とは?わかりやすく解説

決定木(Decision Tree)は、見た目が木の枝分かれに似ていることから名付けられた、意思決定や予測を行うための強力なツールです。この記事では、決定木の基本的な考え方、仕組み、メリット・デメリットを、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説します。データ分析や機械学習に興味がある方におすすめです。


決定木(Decision Tree)とは何か

決定木(けっていぎ、Decision Tree)とは、文字通り「決定」を行うための「」のような構造をした分析方法のことです。何かを分類したり、将来どうなるかを予測したりする際に使われます。

例えば、あなたが「明日の天気によって、傘を持っていくべきか?」を判断したいとします。このとき、頭の中で自然と以下のようなことを考えているかもしれません。

  • 「天気予報は雨か?」
    • 「はい」なら、「傘を持っていく」
    • 「いいえ」なら、次に「降水確率は50%以上か?」
      • 「はい」なら、「念のため傘を持っていく」
      • 「いいえ」なら、「傘は持っていかない」

このように、一連の「もし~なら、こうする」という質問と答えを繰り返して、最終的な結論に至る考え方を、図で表すと木の枝が分かれていくように見えるため、「決定木」と呼ばれます。

決定木は、私たち人間が普段何かを判断するときの思考プロセスに似ているため、結果がなぜそうなったのかを理解しやすいのが大きな特徴です。コンピューターに複雑な計算をさせて答えを出すだけでなく、その答えに至った道筋を私たちにも示してくれる、親切な分析手法と言えるでしょう。

主に、手元にあるデータ(過去の天気と傘の有無の記録など)から、この「質問と答えのルール」の集まりである決定木を自動的に作り出し、新しいデータ(明日の天気予報)が来たときに、どの結論(傘を持っていくか)に当てはまるかを判断するために使われます。


処理の流れ

決定木がどのようにして作られ、そして使われるのか、そのステップをもう少し詳しく見ていきましょう。ここでは、果物を見分ける決定木を作る例で考えてみます。「リンゴ」「みかん」「バナナ」の3種類の果物があるとします。

1. 決定木を作る(学習フェーズ)

まず、たくさんの果物のデータ(色、形、重さなど)と、それが「リンゴ」「みかん」「バナナ」のどれなのかという正解ラベルを集めます。このデータを使って、果物を見分けるための質問のルール(決定木)を作っていきます。

  • 最初の質問を選ぶ: 最初にどの質問をするのが、最も効率よく果物を見分けられるかを考えます。例えば、「色は赤いか?」という質問が良いかもしれませんし、「形は丸いか?」という質問が良いかもしれません。コンピューターは、それぞれの質問をした場合に、どれだけデータが綺麗に分類できるか(専門用語では「情報利得が大きいか」などと言います)を評価し、最適な最初の質問を選びます。 例えば、「色は赤いか?」という質問で、赤い果物の多くがリンゴ、そうでないものがみかんやバナナ、というようにある程度分けられるなら、これは良い質問と言えます。

  • データを分割する: 選ばれた質問の答え(「はい」か「いいえ」かなど)によって、データをグループに分けます。例えば、「色は赤いか?」という質問で、「はい」のグループと「いいえ」のグループにデータが分かれます。

  • さらに質問を繰り返す(木を成長させる): 分割されたそれぞれのグループに対して、さらに最適な質問を選び、データを分割していく…という作業を繰り返します。 「色は赤いか?」で「はい」と答えたグループには、次に「ヘタはあるか?」と質問するかもしれません。「いいえ」と答えたグループには、「皮はむきやすいか?」と質問するかもしれません。 こうして、木の枝がどんどん伸びていくように、質問が連なっていきます。

  • 停止する条件: いつまでも質問を繰り返すわけにはいきません。以下のような条件になったら、その枝の成長を止めます。

    • そのグループの果物がすべて同じ種類になった(例:すべてリンゴになった)。
    • これ以上質問をしても、うまく分類できなくなった。
    • 木の深さ(質問の回数)が一定以上になった。 こうしてできた最終的な各枝の先端(葉っぱの部分)が、分類結果(「これはリンゴです」「これはみかんです」など)となります。

2. 決定木を使う(予測・分類フェーズ)

一度決定木が完成すれば、新しいデータが来たときに、それを使って予測や分類ができます。

  • 新しいデータを木にあてはめる: 例えば、新しく手に入れた果物の情報(色が黄色、形が細長い、重さが150gなど)を、作られた決定木の最初の質問から順番に当てはめていきます。 「色は赤いか?」→「いいえ」 「形は細長いか?」→「はい」 といったように、質問に答えていきながら木の枝をたどっていきます。

  • 最終的な結論を得る: 最終的にたどり着いた葉っぱの部分が、その新しい果物の分類結果(予測)となります。例えば、「バナナ」という葉っぱにたどり着けば、その果物はバナナであると予測されます。

このように、決定木は「学習フェーズ」でデータからルールを学び、「予測・分類フェーズ」でそのルールを使って新しいデータを判断するという流れで処理を行います。


良いところ(メリット)

決定木には、他の分析手法と比べていくつかの優れた点があります。

  1. 結果の解釈がしやすい: これが決定木の最大のメリットと言えるでしょう。木構造は視覚的に理解しやすく、「なぜこの結論に至ったのか」という理由や根拠が、質問の連なりとして明確に示されます。例えば、ある顧客が特定の商品を購入すると予測された場合、どのような条件(年齢、過去の購買履歴など)がその予測につながったのかを具体的に把握できます。これは、ビジネス上の意思決定において非常に重要です。

  2. 前処理の手間が比較的少ない: データ分析を行う際、元データをそのまま使えることは少なく、何らかの加工(専門用語で「前処理」)が必要になることが多いです。決定木は、数値データだけでなく、「晴れ」「曇り」「雨」のようなカテゴリデータも比較的そのまま扱いやすいという特徴があります。また、データが特定の分布に従っている必要などもありません。

  3. 重要な変数(特徴)がわかる: 決定木が作られる過程で、どの質問(どのデータ項目)が分類や予測に大きく貢献したかがわかります。木の上の階層で使われる質問ほど、全体を分けるのに重要な役割を果たしていると考えられます。これにより、問題解決の鍵となる要因を見つけ出す手助けになります。

  4. 非線形な関係も捉えられる: データ間の関係が単純な直線関係(一方が増えればもう一方も増える、など)でない、複雑な関係性(非線形な関係)も捉えることができます。これは、現実世界の多くの現象が単純ではないため、重要な能力です。

  5. 計算コストが比較的低い(予測時): 一度決定木が作られてしまえば、新しいデータを分類したり予測したりするのは、木を上からたどっていくだけなので、比較的速く行うことができます。大量のデータに対して迅速に判断を下す必要がある場合に有効です。

これらのメリットから、決定木はデータマイニングや機械学習の分野で広く利用されており、特に結果の透明性や説明可能性が求められる場合に重宝されます。


悪いところ(デメリット)

一方で、決定木にもいくつかの苦手なことや注意すべき点があります。

  1. 過学習(オーバーフィッティング)しやすい: これが決定木の最も注意すべきデメリットの一つです。過学習とは、学習に使ったデータ(訓練データ)に対しては非常に高い精度で予測や分類ができるものの、新しい未知のデータに対してはうまく機能しない状態を指します。決定木は、訓練データの細かな特徴まで捉えようとして、複雑になりすぎる傾向があります。その結果、訓練データに特化しすぎてしまい、汎用性を失ってしまうのです。木の枝葉が伸びすぎた状態をイメージすると良いでしょう。 (対策として、枝刈り(pruning)という、木の枝を適切に剪定するテクニックなどが使われます。)

  2. データの小さな変動に影響を受けやすい: 学習に使うデータが少し変わるだけで、出来上がる決定木の構造が大きく変わってしまうことがあります。つまり、安定性に欠ける場合があるということです。これは、どの質問を最初にするか、といった選択が、その後の木の形を大きく左右するためです。

  3. 分類境界が軸に平行になる: 決定木は、各質問で「ある値より大きいか小さいか」といった形でデータを分割していきます。そのため、データの分類境界が、各特徴量の軸に平行な線(あるいは面)でしか表現できません。もし、最適な分類境界が斜めになっているような場合、決定木はそれをギザギザの線で近似しようとするため、非効率になったり、精度が低下したりすることがあります。

  4. 連続値の扱いや、値のわずかな違いの表現が苦手な場合がある: 例えば、年齢のような連続的な値を扱う際、「30歳以下か、それ以上か」というように、どこかで区切って分類します。しかし、29歳と31歳はほとんど変わらないのに、この区切り方だと全く別のグループに入ってしまう可能性があります。このような微妙な違いを捉えるのが苦手な場合があります。

  5. 最適な決定木を見つけるのは難しい: 理論上、可能なすべての決定木の中から本当に最適なものを見つけ出すのは非常に困難な問題(専門用語でNP困難な問題)とされています。そのため、実際には「ほぼ最適」と思われる木を効率的に見つけるためのヒューリスティックな(経験則に基づいた)方法が用いられています。

これらのデメリットを理解し、適切に対処する(例えば、複数の決定木を組み合わせる「ランダムフォレスト」や「勾配ブースティング」といった手法を用いる)ことで、決定木の強力な分析能力をより効果的に活用することができます。


まとめ

決定木(Decision Tree)は、何かを分類したり予測したりする際に、一連の「もし~なら、こうする」という質問を繰り返して結論を導き出す、木の枝分かれのような構造をした分析手法です。

処理の流れは、まず手元にあるデータから、最も効果的な質問とその答えの組み合わせ(ルール)を学習して決定木を自動生成します。そして、新しいデータが現れた際には、その生成された決定木の質問に沿って答えを選択していき、最終的な分類結果や予測値を得るという形です。

決定木の良いところは、

  • 結果の解釈が非常にしやすいこと(なぜその結論になったのかが明確)
  • データの前処理の手間が比較的少ないこと
  • どの情報が重要だったのか(重要な変数)がわかりやすいこと
  • 複雑な(非線形な)関係性も捉えられること
  • 一度木が作られれば、予測時の計算が速いこと などが挙げられます。

一方で、悪いところとしては、

  • 学習データに適合しすぎてしまい、新しいデータで性能が出ない「過学習」を起こしやすいこと
  • 学習データが少し変わるだけで、木の構造が大きく変わるなど、安定性に欠ける場合があること
  • 分類の境界線が軸に平行にしか引けないこと
  • 値のわずかな違いを表現するのが苦手な場合があること
  • 厳密に最適な木を見つけるのが困難であること といった点が挙げられます。

決定木は、その分かりやすさから、医療診断の補助、顧客の行動予測、不良品の検知など、ビジネスから科学技術まで幅広い分野で応用されています。単独で使われるだけでなく、他の手法(例えば、ランダムフォレストや勾配ブースティングといった、複数の決定木を組み合わせるアンサンブル学習)の基本的な構成要素としても非常に重要な役割を担っています。


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