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WPFとWinUI 3の徹底比較:Windowsデスクトップ開発の最適解を探る

Windowsデスクトップアプリ開発における主要フレームワークであるWPFとWinUI 3を徹底比較。機能、パフォーマンス、互換性、開発環境など多角的に分析し、最適な選択をサポートします。最新の情報をもとに、開発者のニーズに応じたフレームワーク選定の指針を提供します。

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Windows向けのデスクトップアプリケーションを開発しようとするとき、多くの開発者が「WPF」と「WinUI 3」という2つの技術のどちらを選ぶべきかという問題に直面します。これらはどちらもWindowsアプリの見た目(UI)を作るための強力なツールですが、それぞれに異なる特長と歴史があります。

この記事では、これからWindowsアプリ開発を始める方や、どちらの技術を採用すべきか迷っている方のために、WPFとWinUI 3の違いを、難しい専門用語をなるべく使わずに、丁寧にわかりやすく解説していきます。


WPFとWinUI 3、それぞれの正体

まずは、WPFとWinUI 3がそれぞれどのようなものなのか、その概要から見ていきましょう。

WPF (Windows Presentation Foundation) - 信頼と実績のベテラン

WPFは、2006年にマイクロソフトによってリリースされた、歴史のあるUIフレームワークです。長年にわたり、多くのWindowsアプリケーション開発で利用されてきた実績があります。

  • 技術的な土台: 「.NET Framework」や、その後継である「.NET」という大きな開発基盤の上で動作します。
  • 最大の特長: デザインの自由度が非常に高いことです。ボタンの形を完全に変えたり、複雑なアニメーションを加えたりと、UIを細部まで徹底的に作り込むことができます。また、長い歴史の中で多くの開発者に使われてきたため、関連情報や便利な部品(ライブラリ)が豊富に揃っているのも大きな強みです。
  • 現在の立ち位置: 現在もマイクロソフトによるサポートは続いており、既存の多くのアプリケーションがWPFで作られています。まさに、信頼と実績を兼ね備えたベテラン技術と言えるでしょう。

WinUI 3 - 未来を見据えた期待の若手

一方、WinUI 3は、WPFよりもずっと新しい、モダンなUIフレームワークです。「Windows App SDK」という、新しいWindowsアプリ開発のための道具セットに含まれています。

  • 技術的な土台: WindowsのOSにより近い場所で動作するため、きびきびとした高速な動作が期待できます。
  • 最大の特長: Windows 11で採用されている「Fluent Design」という新しいデザインルールに標準で対応している点です。これにより、角の丸いボタンや半透明の効果など、現代的で美しい見た目のアプリケーションを簡単に作ることができます。また、タッチ操作やペン入力といった、最新の操作方法にも最適化されています。
  • 現在の立ち位置: これからのWindowsアプリ開発の主流になることが期待されている技術です。まだ発展途上の部分もありますが、パフォーマンスと見た目の新しさで注目を集めています。

徹底比較!どこが違うの?

それでは、WPFとWinUI 3の具体的な違いを、様々な角度から比較してみましょう。

比較項目WPF (ベテラン)WinUI 3 (期待の若手)
技術的な土台.NET上で動く、成熟したフレームワークWindows App SDKの一部で、OSに近いネイティブな技術
パフォーマンス安定しており、信頼性は高い最新の仕組みで、より高速な描画や応答が期待できる
UIの見た目非常に柔軟だが、標準のデザインは少し古め最新のFluent Designに標準対応。モダンで美しい
開発のしやすさ開発を助けるツールが充実しているまだ発展途上。一部の便利機能が未整備
乗り換えやすさ既存のアプリを活かしやすい新規開発向き。WPFからの部分的な乗り換えも可能
部品や情報の多さ非常に豊富これから増えていく段階

動きのスムーズさと見た目の新しさ

パフォーマンス、つまりアプリケーションの動作の軽快さにおいては、新しい設計のWinUI 3に分があります。OSに近い部分で画面を描画するため、より速く、スムーズな操作感を実現しやすいです。

一方のWPFも、長年の改良により非常に安定したパフォーマンスを発揮します。極端に複雑な画面でなければ、動作が重くなることはほとんどありません。

UIの見た目に関しては、WinUI 3が標準でWindows 11のようなモダンなデザインを採用しており、何もしなくても洗練されたアプリを作ることができます。WPFでもカスタマイズ次第でモダンな見た目にすることは可能ですが、標準の状態では少し古い印象を与えてしまうかもしれません。

開発を助ける道具たち(開発体験)

アプリケーション開発を効率的に進めるためには、それをサポートするツールが欠かせません。この点では、歴史の長いWPFが有利です。

WPFには「XAML デザイナー」という強力なツールがあり、プログラミングコードを書かずに、マウス操作で画面のレイアウトを直感的に作ることができます。また、MVVMという設計手法に対応しやすく、大規模なアプリケーションでも整理された状態を保ちやすいという利点があります。

WinUI 3はまだ新しいため、この「XAML デザイナー」が提供されていません。その代わり、「ホットリロード」という、コードの変更が即座に実行中のアプリに反映される機能があり、スピーディーな開発をサポートします。しかし、全体的なツールの充実度では、まだWPFに及ばないのが現状です。

今あるアプリからの乗り換えやすさ

もし、すでにWPFで作られたアプリケーション(資産)がある場合、それを活かしながら開発を続けたいと考えるのが自然です。

  • WPFのまま続ける: 既存のアプリに機能を追加したり、メンテナンスしたりするのが主な目的であれば、無理に新しい技術に乗り換えず、WPFを使い続けるのが最も安全で効率的です。
  • 部分的に新しくする: WPFアプリの一部だけをWinUI 3のモダンな部品に置き換える「XAML Islands」という技術もあります。これにより、既存の資産を活かしつつ、段階的に新しい見た目や機能を取り入れていくことが可能です。
  • 完全に新しく作る: アプリケーションをゼロから作り直す場合や、最新のデザインを全面的に採用したい場合は、WinUI 3で新規開発するのが良い選択肢となります。

結論:あなたのプロジェクトにはどちらが最適?

ここまでWPFとWinUI 3の違いを見てきましたが、最終的にどちらを選ぶべきなのでしょうか。それは、あなたのプロジェクトが何を最も重視するかによって決まります。

WPFを選ぶべきケース

  • 既存のWPFアプリの保守や機能追加が中心
    • 長年運用してきた安定したアプリケーションがあり、今後もそれを使い続けたい場合。
  • 開発の安定性や豊富な資料・部品を重視したい
    • 開発ツールの充実度や、インターネット上で見つかる情報の多さを優先したい場合。
  • 非常に複雑で特殊なUIデザインを実現したい
    • WPFの持つ高いカスタマイズ性を最大限に活かして、独自のUIを作り込みたい場合。

ひとことで言うなら、「安定・実績・資産活用」を重視するならWPFです。

WinUI 3を選ぶべきケース

  • Windowsアプリを新規で開発する
    • 過去のしがらみがなく、ゼロからアプリケーションを作る場合。
  • Windows 11のようなモダンな見た目と操作性を実現したい
    • パフォーマンスを重視し、ユーザーに最新の体験を提供したい場合。
  • 将来性のある技術に投資したい
    • 開発ツールの未整備などの課題を受け入れ、これからの主流となる技術を先取りしたい場合。

ひとことで言うなら、「新規開発・最新デザイン・将来性」を重視するならWinUI 3です。

中間的な選択肢:ハイブリッド開発

前述の「XAML Islands」を使えば、WPFの安定した基盤の上に、WinUI 3のモダンな部品を乗せる、という「いいとこ取り」も可能です。既存のアプリの見た目を少しだけ新しくしたい、といったニーズに柔軟に応えることができます。


まとめ

WPFとWinUI 3は、どちらも優れたWindowsアプリ開発の技術ですが、その性格は大きく異なります。

  • WPFは、長年の実績に裏打ちされた安定性と柔軟性が魅力のベテラン。
  • WinUI 3は、これからの時代を見据えたパフォーマンスとモダンなデザインが魅力の若手。

どちらか一方が絶対的に優れているというわけではありません。あなたのプロジェクトの目的、開発チームのスキル、そして将来の展望を総合的に考慮して、最適な技術を選択することが成功への鍵となります。この記事が、その選択の一助となれば幸いです。

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