IndexNowとは?SEOを加速させる新しい仕組みを徹底解説
Webサイトの更新を検索エンジンに即時通知できるIndexNow。その仕組み、メリット、具体的な導入手順(GitHub Actionsでの自動化含む)を、初心者にも分かりやすく解説します。サイト運営者必見です。
IndexNowとは? Webサイト運営者が知るべき新しい常識
Webサイトを運営していると、「新しい記事を公開したのに、なかなか検索結果に表示されない…」という経験をしたことはないでしょうか。これは、検索エンジンがあなたのサイトの更新に気づくまでに時間がかかるために起こる現象です。
このタイムラグを解消し、Webサイトの情報をより速くユーザーに届けるために生まれたのが「IndexNow(インデックスナウ)」という仕組みです。
この記事では、IndexNowがどのようなもので、なぜ重要なのか、そしてどのように導入すればよいのかを、技術的な詳細に踏み込みつつも、分かりやすく解説していきます。
従来の検索エンジンの課題:「プル型」の限界
これまでの検索エンジンは、「プル(Pull)型」と呼ばれる方法でWebサイトの情報を収集していました。これは、検索エンジンのクローラー(情報を収集するプログラム)が、世界中のWebサイトを定期的に巡回し、更新されているページを見つけ出すというものです。
この方法を例えるなら、定期的に図書館へ足を運び、新しい本が入荷していないか自分の目で確かめるようなものです。毎日通ったとしても、本が棚に並んだ瞬間に知ることはできません。
この「プル型」には、以下のような課題がありました。
- タイムラグの発生: クローラーが次にあなたのサイトを訪れるまで、更新情報が検索エンジンに伝わりません。そのため、情報の反映に数日から数週間かかることも珍しくありませんでした。
- サーバーへの負荷: クローラーは、更新があるかどうかに関わらずサイトを巡回します。頻繁なアクセスは、サイトを置いているサーバーに余計な負荷をかける原因になります。
- 無駄なリソース消費: 検索エンジン側も、更新されていないページまでクロールするため、膨大な計算リソースを消費していました。
IndexNowの登場:「プッシュ型」という解決策
IndexNowは、この課題を解決するために「プッシュ(Push)型」というアプローチを採用しています。
これは、Webサイトの運営者側から「新しいページを公開しましたよ」「このページを更新しましたよ」と、検索エンジンに能動的に通知する仕組みです。
先ほどの図書館の例で言えば、新しい本が入荷したら、図書館からあなたの元へ「新刊が入りました」と電話でお知らせが来るようなものです。これにより、あなたは無駄足を踏むことなく、すぐ最新の情報を手に入れることができます。
この「プッシュ型」通知により、IndexNowは検索エンジンとWebサイトの間の情報伝達を劇的に効率化します。
IndexNowの仕組み
IndexNowは、いくつかの検索エンジンが共同で推進しているオープンなプロトコル(共通のルール)です。技術的な要点は以下のようになっています。
-
APIキーによる本人確認:
- 誰でも勝手に通知を送れてしまっては困るため、本人確認の仕組みがあります。
- まず、サイト運営者は自分だけの「APIキー」(秘密の合言葉のような文字列)を生成します。
- そして、そのキーを特定のファイル名(例:
8c3c1b6bf1934211918a9d70146006c3.txt
)で、Webサイトのサーバーのルートディレクトリ(一番上の階層)に設置します。 - 通知を受け取った検索エンジンは、このキーファイルを確認することで、「この通知は間違いなくサイトの所有者から送られてきたものだ」と判断できます。
-
更新情報の通知:
- 通知は、HTTPリクエストというインターネット上の標準的な通信方法で行います。
- 単一URLの通知: 1つのURLだけを通知したい場合は、GETリクエストというシンプルな形式で送信します。
- 複数URLの通知: 複数のURLをまとめて通知したい場合は、POSTリクエストを使い、JSONというデータ形式で最大10,000件のURLリストを一度に送信できます。
-
検索エンジン間の連携:
- IndexNowの大きな特徴は、参加している検索エンジン間での情報共有です。
- 例えば、あなたがMicrosoftのBingに更新を通知すると、Bingは10秒以内にYandexやNaverなど、他のIndexNow参加検索エンジンにもその情報を共有します。
- これにより、一度の通知で複数の検索エンジンに更新を伝えられるため、非常に効率的です。
対応している検索エンジン
現在、IndexNowには以下の主要な検索エンジンが対応しています。
- Microsoft Bing
- Yandex
- Seznam
- Naver
- Yep
残念ながら、Googleはまだ本格的な対応を表明していませんが、このプロトコルのテストを行っていると公表しており、将来的には参加する可能性が期待されています。
IndexNowを導入するメリット
では、IndexNowを導入すると具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。
1. インデックス速度の劇的な向上
最大のメリットは、検索結果への反映が非常に速くなることです。新しいコンテンツや重要な更新が、公開後すぐに検索エンジンに認識されるため、ユーザーにいち早く最新の情報を届けることができます。これは、ニュースサイトやECサイト、求人サイトなど、情報の鮮度が重要なWebサイトにとって計り知れない価値があります.
2. SEO効果の最大化
検索エンジンに素早くインデックスされることは、SEO(検索エンジン最適化)において非常に有利です。競合サイトよりも早く情報を提供することで、先行者利益を得られる可能性があります。また、更新が即座に反映されるため、SEO施策の効果測定もスピーディに行えるようになります。
3. サーバー負荷の軽減
従来のクローラーによる無駄なアクセスが減少するため、Webサーバーの負荷が軽減されます。これにより、サイトの表示速度が安定し、ユーザー体験の向上にも繋がります。また、サーバーの維持コストを抑えることにも貢献するかもしれません。
4. 環境への配慮(サステナブルなWeb)
IndexNowは、検索エンジン側の無駄なクロールをなくすことにも繋がります。これは、世界中のデータセンターで消費される膨大な電力を削減することに貢献します。つまり、IndexNowの導入は、より環境に優しく、サステナブルなWebの実現に向けた一歩とも言えるのです。
IndexNowの導入手順(Next.jsとGitHub Actionsでの自動化例)
IndexNowの導入は、手動で行うこともできますが、サイトを更新するたびに通知を自動化するのが最も効率的です。ここでは、人気のフレームワークであるNext.jsで構築したサイトを、GitHub Actionsを使ってデプロイする際に、IndexNowへの通知を自動化する具体的な手順を解説します。
ステップ1: APIキーの準備とGitHub Secretsへの登録
まず、IndexNowで使用するAPIキーを準備します。
- APIキーを生成します。キーは、推測されにくい十分な長さのランダムな文字列であるべきです。オンラインのUUIDジェネレータなどを使っても良いでしょう。
- キーファイル名を決めます。キーそのものをファイル名にするのが一般的です。(例:
8c3c1b6bf1934211918a9d70146006c3.txt
) - 作成したAPIキーとキーファイル名を、GitHubリポジトリのSecretsに登録します。これにより、コード内に直接秘密の情報を書き込むことなく、安全に利用できます。
INDEXNOW_API_KEY
: 生成したAPIキーINDEXNOW_KEY_FILENAME
: キーファイル名(例:8c3c1b6bf1934211918a9d70146006c3.txt
)SITE_DOMAIN
: あなたのサイトのドメイン(例:www.example.com
)
ステップ2: ビルド時にキーファイルを自動生成する
次に、GitHub Actionsのワークフローを編集し、サイトのビルドプロセス中に、Secretsに登録したキー情報からキーファイルを自動で生成するように設定します。
Next.jsの場合、public
ディレクトリに置いたファイルは、ビルド後にサイトのルートに配置されます。
.github/workflows/deploy.yml
(抜粋)
jobs:
build-and-deploy:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- name: Checkout
uses: actions/checkout@v4
# ... Node.jsのセットアップなど ...
# ▼▼▼ ビルドの直前にこのステップを追加 ▼▼▼
- name: Create IndexNow Key File
run: |
# publicディレクトリがなければ作成
mkdir -p public
# Secretsからキーファイル名と内容を読み込んでファイルを生成
echo "${{ secrets.INDEXNOW_API_KEY }}" > "public/${{ secrets.INDEXNOW_KEY_FILENAME }}"
# ▲▲▲ ここまでを追加 ▲▲▲
- name: Install Dependencies and Build
run: |
npm install
npm run build # next build などを実行
# ... S3へのデプロイなどの後続ステップ ...
この設定により、main
ブランチにコードがプッシュされるたびに、public
ディレクトリ内に正しい内容のキーファイルが自動で作成され、サイトと共にデプロイされます。
ステップ3: デプロイ後にIndexNowへ通知する
最後に、サイトのファイルがサーバーにデプロイされた後、IndexNowに更新を通知するステップを追加します。
ここでは、サイトマップ(sitemap.xml
)を読み込み、そこに含まれる全てのURLをIndexNowに送信する方法を紹介します。
.github/workflows/deploy.yml
(抜粋)
# ... ビルドやデプロイのステップ ...
# ▼▼▼ デプロイが成功した後にこのステップを追加 ▼▼▼
- name: Notify IndexNow
run: |
SITEMAP_URL="https://${{ secrets.SITE_DOMAIN }}/sitemap.xml"
# サイトマップからURLを抽出し、jqでJSON配列に変換する
# curl, grep, sed, jq などのツールが必要です
URL_LIST_JSON=$(curl -s $SITEMAP_URL | grep -o '<loc>[^<]*</loc>' | sed -e 's/<loc>//' -e 's/<\/loc>//' | jq -R . | jq -s .)
echo "Submitting URLs to IndexNow..."
curl -X POST "https://api.indexnow.org/indexnow" \
-H "Content-Type: application/json; charset=utf-8" \
-d '{
"host": "${{ secrets.SITE_DOMAIN }}",
"key": "${{ secrets.INDEXNOW_API_KEY }}",
"keyLocation": "https://${{ secrets.SITE_DOMAIN }}/${{ secrets.INDEXNOW_KEY_FILENAME }}",
"urlList": '"$URL_LIST_JSON"'
}'
このスクリプトは以下の処理を行っています。
- デプロイされたサイトのサイトマップを取得します。
- サイトマップ内の全URLを抽出し、IndexNowが要求するJSON形式のリストに変換します。
curl
コマンドを使い、ホスト名、APIキー、キーの場所、そしてURLリストをまとめてIndexNowのAPIエンドポイントにPOSTリクエストで送信します。
これで、サイトが更新されるたびに、全自動でIndexNowへの通知が完了する仕組みが整いました。
注意点
IndexNowを導入する際には、いくつか注意すべき点があります。
- キーファイルの設置場所: キーファイルは必ずサイトのルートディレクトリからアクセスできるようにしてください。設置場所が間違っていると、検索エンジンがキーを検証できず、通知が失敗(403 Forbiddenエラー)します。
- 通知の頻度: コンテンツを更新するたびに通知するのが基本ですが、あまりにも短時間に頻繁すぎる通知は避け、意味のある更新があったタイミングで通知するようにしましょう。
- URLの制限: 一度のリクエストで送信できるURLは最大10,000件です。これを超える大規模なサイトの場合は、URLリストを分割して複数回に分けて通知(バッチ処理)する必要があります。
まとめ
IndexNowは、Webサイト運営者と検索エンジンの双方にとってメリットの大きい、革新的な仕組みです。
- プッシュ型通知により、サイトの更新を検索エンジンに即時に伝えられる。
- インデックスが高速化し、SEO効果の向上や最新情報の迅速な提供が可能になる。
- 無駄なクロールを減らし、サーバー負荷の軽減と環境負荷の低減に貢献する。
導入には多少の技術的な設定が必要ですが、WordPressのプラグインなどを利用すれば簡単に導入できる場合もありますし、今回紹介したGitHub Actionsのような仕組みを使えば、一度設定するだけで完全に自動化できます。
Googleの本格対応も待たれるところですが、既にBingやYandexなど多くの検索エンジンが対応しており、導入する価値は十分にあります。あなたのWebサイトのポテンシャルを最大限に引き出すために、IndexNowの導入をぜひ検討してみてください。
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