隠れマルコフモデル(HMM)徹底解説|目に見えないルールを読み解く仕組みとは?
隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, HMM)は、言葉や音、行動の中に隠れた“見えないルール”を探す手助けをしてくれる仕組みです。本記事では、難しい数式を使わずに、HMMの考え方や使いどころをやさしく、わかりやすく解説します。
隠れマルコフモデル(HMM)ってなんだろう?
私たちの毎日の生活や自然の中には、「見えないけれど、なんとなく決まっている流れ(ルール)」があります。たとえば、天気の変化や話し言葉の流れ、人の気持ちの動きなどです。
でも、そのルールはハッキリとは見えません。ただ、外から見える「結果」だけを頼りに、「本当はどうなっているのかな?」と考えるしかありません。
このように、「見えないもの(=本当の状態)」を、「見えるもの(=観察された結果)」から予想する仕組みのひとつが**隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, HMM)**です。
たとえ話でイメージしよう
ある日、あなたはカーテンの向こうでジャンケンをしている人の「声」だけを聞いています。
- 「勝った!」という声が聞こえました。
- 次は「負けた…」
- その次は「引き分け!」
このとき、実際に何を出したか(グー・チョキ・パー)は見えません。でも、声をたくさん聞いていれば、「この人、グーをよく出してるのかな?」「次はチョキかも?」と予想できるようになります。
このように、「見えない出した手(本当の状態)」を「声(観察された結果)」から予想することが、HMMの基本の考え方です。
HMMの中身をやさしく説明すると…
HMMは3つの要素でできています。
1. 見えない状態(本当は何が起きているか)
これは、さっきのジャンケンでいうと「グー」「チョキ」「パー」のような、見えない本当の状況です。これが時間とともに変わっていきます。
2. 状態から出てくる観察(見えるもの)
これは「勝った!」「負けた…」など、私たちが見たり聞いたりできるものです。
3. 状態の移り変わりのルール
たとえば「グーの次はチョキを出しやすい」「パーのあとにまたパーが出やすい」など、状態がどう変わっていくかのルールです。
どんなことに使われているの?
HMMは、実はいろんなところで活躍しています。
- 音声認識:しゃべった言葉から文字を読み取るときに、「今はどの音を話してるか?」を予想する。
- 文字の読み取り(OCR):手書きの文字を見て、「どの文字か?」を判断する。
- 病気の進行予測:症状や検査結果から、見えない体の中の状態を予測する。
- 株価の変化分析:値段の動きから「今は上がりそう?下がりそう?」を考える。
HMMはどうやって学ぶの?
コンピューターがHMMをうまく使うには、「どんな状態があるか」「どう移り変わるか」「どんな結果が出るか」を覚えないといけません。
これには、たくさんのデータ(過去の記録)を使って、
- 状態の移り変わりの確率を学ぶ
- 状態ごとの結果の出方を学ぶ
- 最後に、「この結果は、どの状態からきたのかな?」と推測する
という流れでコンピューターが「見えないもの」を予想できるようになります。
むずかしそうに見えて、実は身近
HMMは、名前のせいでとっつきにくく感じるかもしれません。でも本質はとてもシンプルです。
- 目に見えないけどあるもの(状態)
- 見えるけどそれだけでは分からないもの(結果)
- そして、それらの間にあるルール
これを理解することで、いろんな「ふしぎな流れ」や「予想がむずかしいこと」も、少しずつ見えるようになります。
まとめ
隠れマルコフモデル(HMM)は、
- 見えない状態を
- 見える結果から
- 規則的に予想する仕組み
です。
私たちの生活の中には「見えないけど、ある流れ」がたくさんあります。HMMは、そういった「見えないものの動き」を、やさしく読み解く手助けをしてくれる大事な道具なのです。難しそうに見えて、実は人の「直感」や「勘」に近い考え方とも言えます。
このHMMの考え方を知っておくと、AIや機械学習の世界がグッと身近に感じられるかもしれません。
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